社保導入にあたって考えるべきこと。社保導入はメリットかデメリットか?

こんにちは。 Beauty Salon Branding College(BSBC)の学長/No1 Salon Branding Producer/美容室・美容院・ヘアサロン経営コンサルタントの高橋譲太郎です。BSBCでは、美容院・美容室・美容サロンの経営についての情報発信と、本格的に経営改善をしていく方のためのコンサルティングをご提供しています。

さて今回は、【そもそも「社保」ってどんな内容?社保導入を実施するにあたり考えておくべきこととは】という内容でお伝えしてまいります。



美容業界では「社保完備」の美容院はまだまだ少なく、おそらく全体の2割も加入できていないのではないでしょうか。平成28年1月施行のマイナンバー制度により、社保完備にしたサロンもありましたが、それでも美容業界、特に美容室経営においては社保完備にしている会社が少ないのが現状です。

求人などにおいても、「社保完備」は大きく影響すると言われています。特に新卒生を採用しようと考えている美容院の経営者の方は、「社保完備」の影響を大きく感じているのではないでしょうか。と申しますのも、専門学校の先生や、生徒さんの親が「社保完備の美容室にしなさい」と言うことが非常に多いようです。

求人難の今日の美容業界において、社保完備ではないということで、採用競争から大きく後退してしまうのです。非常に厳しい現状ですね。

ところで、皆さんは「社保」というものがどのような仕組みになっているかをご存知でしょうか。今回Beauty Salon Branding Collegeでは、社保とはどのようなものか?社保完備によって、会社やスタッフはどのような変化があるのかということを考えてみたいと思います。

本来、社保というのは「社会保険制度」というものであり、国が行っている社会保障のうちの一つの分野のことを言います。疾病・高齢化・失業・労働災害・介護などのリスクに対して備えを持っておくという考え方によるものです。

社保の中身としては、年金保険(厚生年金)、医療保険(健康保険)、介護保険(40歳以上から)、雇用保険、労災保険というものから成り立っています。そして、この保障には税金が活用されており、社会保険を導入している雇用主(会社側)と雇用者(スタッフ)が負担することにより賄われているという仕組みです。

ここでは、主に年金保険(厚生年金)、医療保険(健康保険)、雇用保険、労災保険について解説していきます。

◆厚生年金について
厚生年金は将来貰える年金のことです。社保に加入していない美容室のスタッフさんや、個人事業主である業務委託のフリーランス美容師などは、「国民年金」に加入しているかたちです。「厚生年金」「国民年金」どちらも同じ年金ですが、将来貰える額としては厚生年金が多くなります。

それはなぜかと言うと、国民年金は本人のみが支払っていますが、厚生年金は会社とスタッフ本人がダブルで払っているため、支払っている金額が違うのです。当然ながら、会社もダブルで払っており支払金額が多いため、将来もらえる年金額も高くなるということなのです。


◆健康保険について
社保完備の美容室では、スタッフは健康保険に加入しています。社保完備でない美容院では、スタッフは国民健康保険に加入しています。フリーランスの業務委託サロンで働く美容師さんも、国民健康保険です。同じような名前であり、どちらも病院などに行った際の負担額は3割負担で同じです。

では、「健康保険」と「国民健康保険」で、何が異なるのでしょうか?分かりやすいところで言うと女性スタッフが産休を取るときに大きく影響してきます。



出産前休暇の休暇を産休と言いますが、出産予定日の6週間前から出産後8週間の期間が産休として扱われます。妊婦さんは出産前と出産直後は大きな負担がかかります。そのため、出産を控えた(出産直後の)お母さんの母体(とお腹の中の子供)の健康を守るために、健康保険からお金が支給されるのです。

会社と一緒にダブルで払ってきた健康保険料によって、出産前に休暇を取っても産休手当が支給されるという仕組みなのです。しかしながら、この産休手当は「健康保険」を払っている方には支給されますが、「国民健康保険」の方には支給されません。実際の支給額は、産休休暇前に働いていた直近6か月間の給与の2/3ほどです。お給料が20万だったとすると、何もせず国から13万円以上支給されるのです。

また、健康保険には傷病手当金という制度もあります。病気やケガで会社を休んだ場合に、手当金が支給されるというものです。傷病手当金は、病気で休業しているときなど、スタッフさんとその家族の生活を保障するために設けられた制度です。病気やケガのために会社を休み、会社から十分なお給料が受けられない場合に支給されるものです。


◆雇用保険について
雇用保険は、別名失業保険とも言われることがあります。美容院を退職した後に、次の就職先が見つからなければ失業給付金が支給されるものです。しかし、この雇用保険は失業時だけでなく、出産後の育休にも使われているのです。

前述の産休は出産の6週間前から出産後8週間の期間でした。この間は、「健康保険」により「産休手当」が支給されます。出産後9週目以降、子供が1歳になるまでは育休扱いになるのですが、その間に「育休手当」というものが支給されます。実はこの育休手当は、「雇用保険」が財源なのです。

なぜ育休なのに雇用保険が財源なのかというと、「本当は出産後に職場復帰したいけれど、子供が小さくて手が離せず働きに行けない」ということが起こりえます。そうすると、お母さんの職が失われてしまう可能性があるのです。ですから、お母さんの雇用を守るためにも「雇用保険」が適用されるのです。

この育休手当は、出産後9週から半年までの期間は、産休前直近6ヶ月のお給料の2/3が支給されます。そして、半年から子供が1歳になるまでは1/2が支給されることになります。※条件により、最大子供が2歳になるまで支給されることがあります。

健康保険による産休手当、雇用保険による育休手当、どちらも手厚いですね。

また、出産にかかわる手当金としては、「出産一時金」というものがあります。これは、基本的に誰もが受け取れるものであり、支給額は42万円です。しかしながら、産休手当・育休手当は、社保導入美容室で働いているスタッフさんのみが受けられる権利と言えるでしょう。

では、産休手当・育休手当をもらった場合(社保完備美容室のスタッフさん)と、産休育休手当をもらわなかった場合の金額の差は、いくらくらいの違いになるのでしょうか。これは概算ですが、産休前のお給料が20万円だった場合は、約200万円くらいの差になります。非常に大きな違いとなりますね。それだけ手厚くもらえるのであれば、高い社会保険料もうなずけますね。


◆労災について
労災については、通勤中の事故や業務中のケガなどで支給されるものです。美容師の場合、命の危険を感じるような危険な仕事ではありませんが、ハサミやコテなども扱っており、ケガすることも十分考えられます。また美容師さんの場合は、サロンに近いところに住んでおり、自転車で通勤している人も少なくないのではないでしょうか。万が一交通事故に遭ってしまっても、労災により治療費や入院にかかった費用が支給されます。



◆社会保険料はいくらかかるのか?
これだけ社会保険料の手厚さを記載しておりますが、実際加入するとなるととても大きな額の負担になってきます。社会保険料は簡単に言うと、給与の15%増しで負担が増えるとお考え下さい。

例えば、20万円のスタッフを一人雇っているのであれば、会社はお給料とは別に20万円の15%である3万円を社会保険料として国に納めなくてはいけないのです。毎月3万円ということは、年間の負担額は36万円。スタッフが5人いればその5倍となりますから180万円もの負担となるのです。

そして、働くスタッフとしては、お給料の額面から14%ほど税金が天引きされるとお考え下さい。20万円の額面設定だったとすると、20万×14%=28000円が天引きされ、手取りは172000円となるイメージですね。


◆これらのことを踏まえて考えておきたいこと
「社保完備」のサロンであれば、将来の年金が多く支給されたり、女性であれば産休育休などにも対応するため、働くスタッフさんを守ってあげることができると言えます。

しかしながら、社保完備でないサロンは、雇用保険と労災のみに加入しているかたちであり、年金の額が少なくなる、産休が支給されないなどのデメリットも多いのです。


◆業務委託のケースはどのようになっているのか?
業務委託サロンの場合、経営者側はスタッフを「雇用」している訳ではありません。社員ではないのです。ですからそもそも社会保険の負担は何もありません。その分会社側は社会保険料を負担しなくて済みますので、支出は抑えられると言えます。

しかしながら、スタッフ目線で言うと、前述の通り社保に加入しない形になります。そのため、国民年金として年金を支払うため将来貰える年金が少ない、健康保険に加入せず国民健康保険のため産休手当が支給されない&傷病手当金がもらえない、雇用保険に加入していないため育休手当がもらえない、労災に加入していないため事故やケガしても完全に自己負担となるのです。


【本気で価値あるサロン作りを目指す方へ】 



経営者の頭を悩ませる「社保導入問題」。しかしながら、社保導入はスタッフを守るものとなり、会社にとって将来財産になるとも言えます。それを判断するのは経営者自身です。

私たちBeauty Salon Branding Collegeでは、社保導入のプロフェッショナルである社労士を顧問アドバイザーとして迎え入れ、社保導入をスムーズに行うコンサルティングサポートも行っております。また社会保険料の負担増による経営悪化を脱却するための経営コンサルティングサポートや、適切な給与設計をするための人事評価委制度も設けております。

経営を改革し、理想のサロン作りをしていきたいという方は、お問合せフォームよりお問合せ下さい。

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No1 Salon Branding Producer 高橋譲太郎




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